「あーそれにしても金がないわね……」
衛宮邸、居間。家計簿と睨めっこをしながらがしがしと頭をかきつつ、凛は呻いた。居間にいるのは彼女と桜とセイバー、そしてライダーである。
と、紅茶を運んできた士郎は目をぱちくりとさせて
「なんでさ。金なんて簡単に手に入るだろ?」
と、あっさりそう告げた。
「……え?」
聞き間違いかと思ったのか、凛が曖昧な表情で見返す。
「だからさ──」
言いつつ、士郎は口の中で呪文を唱えた。
一瞬後、手の中に現れたのは純金製の豪奢な剣だった。
そして士郎は頷くと、
「よしセイバー、売ってきてくれ」
言いつつ剣をセイバーに放り投げた。
セイバーはびしりと親指を立てると、
「了解ですシロウ! 今日も食事は豪勢なものをお願いしますよ!」
言いつつ、これ以上ないほどの爽やかな笑顔で屋敷を飛び出していく……
その様子を見ていた桜がおろおろとしながら、
「せ、先輩? セイギノミカタはどうしたんですか?」
はっはっは、と士郎は笑いながら、
「ばかだな桜、ちゃんとやってるぞ? この売上金の、なんと5%もボランティアとかに投資してるからなー」
「そ、そんな政治家みたいな先輩はやですー……」
あうううう、と唸る桜。
対して凛はきらきらと目を輝かせている。
士郎はすっと凛へと差し伸べると、
「さあ遠坂、いこう、楽園の彼方へ!」
「ええそうね、一生ついてくわ士郎! だから恒久的に養ってね!」
凛は迷いなく言い切った。
そして二人は屋敷を出て行った。とりあえず士郎宝石買いにいきましょ、という凛の声が聞こえてくる。
「……………えと……」
残された桜は、どうしていいのかわからないのか、ぼんやりと座っている。
それを見たライダーは、ふむ、と呟きくいっと眼鏡を押し上げた。桜の耳元に口をよせ、ぼそっと囁く──
「……とりあえず、ついていけば老後は保証できるかと。」
「あ、先輩待ってくださいー」
完。