「─────っ!?」
がばりと身を起こせば──そこは、見慣れた暗闇。
バゼットは頭を振りつつ、顔をしかめて嘆息した。生き返る直前のあの感覚には、どうやっても慣れそうにもない──気分は最悪。
「よう、目が覚めたか」
妙に癇に障る声が、降りかかった。
「あ──う……」
返事にもなっていない声を返し、息を吸い込む。脳がようやく活性化されてきた。
「ここは……ああ、そうか」
もはや見慣れた光景だった。暗がりの中、眼についたのは絵が揃っていないパズル。そして一人の男。浅黒い肌に何かの紋様が彫り込まれた男──アヴェンジャー。
バゼットは記憶の糸を辿りながら──慎重に口を開いた。
「私はセイバーに負けて……また……初めに戻ってきたのですね」
男は皮肉げに肩をすくめてみせた。
「そう言うことさ。この日々は繰り返される──初めに言っただろ?」
「そう……でしたね」
唇を噛みしめ、うなだれる。そうだ、また負けた──また殺された。セイバーのサーヴァント。完敗だった。あれは反則だ──強すぎる。
初撃であっけなく倒された男は、けたけたと笑い、ひらひらと適当に手を振って見せた。気楽に告げてくる。
「さあ、殺しに行こうぜマスター。じゃないと、この繰り返しの40年間は終わらないぜ……?」
「そう、でしたね。この繰り返しの4じゅ…………え?」
思わずバゼットは聞き返した。
「40…………年?」
アヴェンジャーは、ん? とこちらを振り返って、
「? どうした、まさか忘れたんじゃないよなあ?」
バゼットは顎に手を当てぶつぶつと呟く──
「……と言うことはつまり、今がアレな理由で18歳以上だから、40年後は58歳以上で……それで死んでもまた18歳以上に戻ってこれて……?」
「……おーい」
そして。
彼女は『がばっ!』と顔を上げると、
「アヴェンジャー!」
男の肩を掴んだ。
「お……おうよ」
やや怯んだ様子で、アヴェンジャーはそれでも頷く。
「聖杯戦争はとりあえず保留です!」
バゼットはきっぱりと言い切った。
「なにい!?」
アヴェンジャーは眼を見開いた。
ふふふふふ──と含み笑いなどしつつ、バゼットはぎらりと目を輝かせて断言する──
「ふふふ……とりあえずお金はあるんです! どうせリセットされるんならおもしろおかしく遊んでくらしますよー!」
「え、いやあのちょっと──」
戸惑ったままのアベンジャーの首根っこをずりずりと引きずりつつ、バゼットは声も高らかに宣言する──
「さあ! 夜の街に、れっつらごー!」
完。