ぷちセイバー
「な」
その声はセイバーのものだった。
「な」
驚愕と絶望に満ちた、震える声。
「なー!?」
「──どうしたセイバー!?」
だんっ!
セイバーの絶叫のすぐ後に襖が開き、士郎が飛び込んできた。
「し、シロウ……」
セイバーはふるふると震えながら、それでも返事をする。
「って、これって……?」
シロウが思わず呻いている。
セイバーの姿は小さくなっていた。
全長20センチほどである。
「はーははははは!」
と。唐突に天井から笑い声が響いた。見上げるとそこには何故か凛が張り付いていた。うふふふふ、とにやけた眼差しでセイバーを視姦しながら、
「というわけで、セイバー! あなたの体はちっちゃくさせてもらったわ萌えー!」
「り、リン!? これは一体──!?」
「うふふふふふふう」
よだれをぬぐいながら、しゅたっと床に降り立つ凛。彼女は身をかがめるとセイバーの頬をそっとなでて、
「あー、いい。いいわ。もうかわいすぎ。お姉さんが食べちゃいたいくらいよ! ってゆーか食べちゃう! いただきます!」
「遠坂、どういうことだよ!」
「あんたはひっこんでなさい!」
振り向きすらせずガンドを士郎に打ち込み、セイバーを愛でる凛。
「凛、一体なにごとですか!」
「以下同文!」
飛び込んできたバゼットに同じようにガンドをめり込ませ、凛がそっとセイバーの髪をなでる。
「さあ、というわけでお姉さんと一緒にめくるめく快楽の18禁ワールドへっ!」
「あ、ああああああああああああああああああああ」
がたがたと震えるセイバー。
──ごんっ。
と。やたら鈍いそんな音が響いた。同時、凛がだらだらと血を後頭部から噴き出し、ゆっくりと倒れていく。
「あああ、あ……?」
「ふう」
恐る恐るセイバーが顔を上げる──そこには、手にまな板(縦向き)を持った桜がいた。どうやらそれで殴ったらしい。
「全くもう。姉さんは暴走しすぎですっ」
「さ、サクラ――!」
目をきらきらと輝かせるセイバーに、にたりと底冷えするような笑顔を浮かべて、
「そもそも、セイバーさんはわたしのオモチャなんですから」
「は───?」
ぽかんとするセイバーに、桜はだらだらと流れる鼻血を拭おうともせず、
「さあ、一緒に快楽のとりこに」
「一緒ですよ!」
「桜ー!?」
と。がばりと身を起こして凛が復活した。顔面を血で染めつつ抗議する。
「あんた何すんのよ!」
「ってリン、血! 血―!」
「ん? ああ、こんなもん気合よきあい」
大して気にも留めていないように、凛。
「ち、ちなみにリン、そしてサクラ」
セイバーは恐る恐る口を開く。
「私に――具体的には、どんなことをするつもりですか?」
それを聞いて、姉妹はぽっと顔を赤らめながら、
「それは、ねえ」
「わたしの口からは言えないわよ。書いたら18禁サイトになるし」
「いや、意味がわかりませんが!」
「とにかく色々と楽しいことだからね!?」
「リンが楽しいだけでしょう!」
「そこんとこの答えはノーコメントで!」
「ああもう! 結局最後の手段で――」
両手を構え、宝具を出現させようとして──そこで固まる。
「――あれ」
「ふふふふふふふふふふ」
にたり、と姉妹そろってそっくりな笑みを浮かべる。凛はふふんと腕組みしながら、
「悪いけど宝具は使えないわよ?」
「な、なななななな」
動揺するセイバーに、桜がえへんと胸を張ってずびしと袋を突き出す。
「この、宝具禁止薬を一緒に飲ませましたから!」
「そんなのあるのですかっ!?」
たまらずにセイバーは叫んだ。
「あるのよ! 3パック1000円で!」
「しかもなにげに安い!?」
「そんなのわたしの知ったこっちゃないっ!」
言い切ると、凛はじりっとセイバーとの距離をつめていく──
「さーて、セイバーちゃあん? お姉さんと一緒にちょめちょめしましょうねえ?」
「ちょめちょめって。」
さすがに聞き咎めたのか、桜が呻く。そして。
「ふーじこちゅわーん!」
叫ぶと同時、凛がセイバーに向かってダイブして──
ぱちっ。
──そして、そこで目が覚めた。
「あー」
頭を振りつつ、呻く。
「夢、ですか」
完。