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後後後後後後後後後後後後後後後後後後日談。









衛宮邸・居間。その机の上には今や所狭しと料理が並んでいた。出し巻き卵、ほうれん草のおひたし、シジミの味噌汁、里芋の煮っ転がし──いずれも懇切丁寧に作られた副菜が並んでいる。その中央にはじゅうじゅうと音を立てる鉄板が鎮座している──。

「あら、おいしそう。随分(いろどり)が豊かですのね、和食って。今まで日本食は食べたたことはなかったのですけれど、──ええ、これからは認識を改める必要があるかもしれませんわね」

 あがった感嘆の声に、士郎は破顔した。

「うん、よかった──どうしようか色々考えたんだけどさ。冷めないうちに食べてくれ」

「……凛」

 低く鋭く唸るのは、セイバー。

「ええ、では早速いただきますわ……あら? もう、シェロったら。フォークとナイフがありませんわよ? これでは食べられないじゃありませんか」

 おっちょこちょいですわね、と眉根を下げるが、士郎はぱたぱたと手を振り、それに苦笑で答えた。

「ルヴィアさん、和食は箸で食べるものなんです。手元にある二本の棒を使って食べるんですよ」

「あら、これは失礼。ふうん──そう、では私もそちらの文化に則り、ハシで頂くとします。──シェロ? 悪いけど(ワタクシ)、お箸の持ち方がよくわかりませんの。もしよろしければ教えてくださいません?」

「……凛さん」

 付き合いきれませんね、と呆れたように肩を竦め、お茶をすするのは───カレン。

「ああ、うん。ええと、こう──です」

 言いつつ、手元にあった箸を持ってみせる士郎。

「……あら。意外と難しいのですね。こ、こうですか?」

 眉をひそめつつ、それに倣おうとするルヴィア。しかし彼女のソレは、士郎の持ち方とはどうも違っているようだ。苦笑しつつ、士郎は箸をひょこひょこと動かしてみせる。

「ちょっと違うかな。こう。」

「むー……」

 難しい顔で唸る。士郎は少しだけ困ったように笑ってから、

「ええと、ごめんルヴィアさん」

 言いつつ、傍へと寄って行った。彼女の手と箸をつかみ、それを正しい持ち方へと直す。それから無造作に手を重ね、幾度かかちかちと箸を合わせてみる──

「ひゃっ──」

 ルヴィアが小さな悲鳴を上げるが、士郎は特に気づいた様子もなかった。

 ──空気が重くなる。居間の温度がどんどん下がる──

「こう。で、食べる時はこうやって動かして……こう。どう、わかりました……?」

 すぐ真横にある士郎の顔に、ルヴィアは多少頬を赤らめながらも優雅に笑ってみせた。こほんと咳ばらいをしてみせてから、

「あ、ああ、成程。わかりましたわ。──それとシェロ? 確かに(ワタクシ)、貴方を執事とするよう言いましたが、普通に呼んでくださって結構ですのよ? 敬語も結構です。普段通り、ありのままのシェロがいいですわ」

「わかりました──いや、わかった、ルヴィア」

 言って、まっすぐルヴィアを見つめる士郎。

 よろしい、と囁き、ご褒美だとばかりに微笑んでみせるルヴィアゼリッタ。

「姉さん」

 あくまでもその表情は笑顔のまま、しかし背後に(くら)い空気を背負い、桜──

「……シェロは料理も上手いんですのね。──そうそう、リンから聞きましたが、貴方そのうちロンドン(時計塔)へ来るんでしょう? (ワタクシ)の屋敷で働きませんこと? いえ、シェロさえよければ(ワタクシ)の弟子に──」

 ……ぎしり。

 嫌な音がした。軋むような潰れるような。

「……はぁ。」

低い嘆息だった。噛みしめた歯の隙間から、怒りを押し殺して無理やり声を発したような。

 凛だった。遠坂凛。腕を組み、とんとんと指で苛立たしげに叩いている。

 赤かった。ただひたすらに赤かった。背後に漂わせたその気配は、烈火のよう。

 そして、彼女は。こめかみを引きつらせながら、押し殺した声で唸るように告げる──

「ええと。そこまでにしてくれませんか、ミスエーデルフェルト……?」

 衛宮邸。今日はどうやら──荒れそうだった。

 

 

 

 

 

 

 ──居間の空気はやたら重く、そして張り詰めてきていた。

ひくりと口を引きつらせつつ、凛はすっと背筋を伸ばした。腰に手を当て、髪をかきあげ──告げる。

「──ミスエーデルフェルト? あまり調子に乗らないでいただけませんこと?」

「あら、ミストオサカ。(ワタクシ)、調子になんか乗っているように見えまして?」

 対するルヴィアゼリッタもまた、優雅に、そして尊大に微笑む。見せつけるように添えられている士郎の手へと指を這わせ──、そしてそっとそれを包み込みながら。

 ──ぴしり。温度がさらに下がる。空気がさらに澱んでいく──

「ええ、それはもう。……あと士郎はわたしの弟子だから。勝手に勧誘しないで頂戴」

 あっははは、と乾いた笑顔。が、彼女はふんとそれを一笑に伏した。

「あら、そうなんですの? 貴方が弟子を? それはまた──」

「何よ。何か言いたいことでも? ……って、大体それなによ!」

 びしりと凛が指さしたのは、机の上の鉄板料理──サイコロステーキと餅が何故か一緒に乗っているものだった。

午後二時。皆が昼食を食べ終えた後に散策から戻ってきたルヴィアゼリッタは、その時点ではまた昼食を食べていなかったらしい。

当然空腹だった彼女は何か食べるものを要求。対して士郎は昼食の残り物を出した。が、これに対してルヴィアは首を横に振る。冷めている料理は食べたくない──ましてや食べ残しなどもっての外だ。その発言で、まずセイバーが切れた。

加速度的に冷却されていく周囲の空気を余所に、ルヴィアは士郎に向って餅をあしらったステーキが食べたいなどとのたまわったのだった。

かくして、士郎の創意工夫と共に創られたのがこの料理である。大根おろしが鎮座しているところを見ると、味付けは和風のようだ。

「お餅ステーキですが。まあフォアグラ添えのようなものですわよね?」

「全然違うっ! てか聞いたことないわよそんなの!」

「ま、まあまあ二人とも──」

 引き攣った笑顔を浮かべる士郎。桜もそれに続く。

「……とりあえず作戦会議。あっちでやりましょ」

 言ってくいっと親指で部屋の隅を指し示す凛。

こくりと頷き、そして一同は端っこに集まり、何やらこそこそと話し始める……

『…………………。』

 残された士郎とルヴィアはしばらくの間ぽかんとしていたが、

「……なんだと言うのです?」

 腑に落ちない、と言うように首をかしげるルヴィアに、士郎は半眼で笑った。

「いや、まあ……」

「よくわかりませんが……」

 まあいいでしょう、と呟き、ルヴィアは食事を再開した。

「口に合うかな。初めて作ったから、正直自信はないぞ」

「いえ、美味しいですわ──シェロはもっと自信をもつべきです。ここまでの腕を持つのでしたら、本格的に修行すれば自分の店を持つことも夢ではありませんわよ? もし望むのでしたら、(ワタクシ)も援助は惜しみませんわ」

「いや。俺別に料理人になるつもりないしさ」

 ははは、と空笑いすると、もったいない、と言うように彼女はくすりと笑った。

「あら、そうなんですか。では何になるつもりです?」

「え」

 思わず絶句する士郎に、ルヴィアはもう一度静かに尋ねた。

「シェロの将来について聞いているんです。普通の生活をするのか。それともこちら側に来るのか。そのくらいは決まっているのでしょう?」

「……俺は──…………」

 はっと息を飲んで、士郎はいつの間にか自分が手を握りこんでいることに気がついた。広げると、そこには赤らんだ掌。少しばかり強く握りこんでしまったらしい。

ふ、と苦笑じみた息を吐いて彼は視線をあげた。ルヴィアを真っ直ぐに見つめ、そして──

 

 ……ぐきゅる。

 

 そんな音が、響いた。

「…………………ん?」

 思わず振り返ると──そこには、金髪の小柄な少女の姿。彼女だけは凛たちの集まりには参加せず、お茶をすすっていたらしい。らしいのだが──。

「……ええと……?」

 居心地悪そうにルヴィアが座りなおす。

 セイバーはそんな様子には目もくれず、眼をきらきらと輝かせて一点を凝視していた。

「……………………。」

「あ、あのう」

 恐る恐る呼びかけるルヴィア。しかし反応はない。

 苦笑しつつ、士郎は口を開く──

「なんだセイバー、セイバーも餅ステーキ食べ──」

「是非っ! お願いしますっ!」

 『くわっ!』と目を見開き、士郎の言葉を最後まで聞くことなく言い切る。やっぱりな、と頷き、彼は立ち上がった。

「ん、うん、まだ材料残っていたし、作れると思う。ちょっと待っててくれよな」

 言いながらキッチンへと向かうその背中にきらきらと輝く目を向け、セイバーは感極まったように呻く。

「は、はい……っ」

 ちなみに彼女はつい一時間ほど前に昼食を食べ終えている。終えているのだが──まあこれもいつものことと言えばいつものことだった。

「……英霊は食事は必要としないのではないのですか?」

 ぽつりと尋ねるルヴィアに、しかしセイバーは首を振り手を広げる。無粋なことを言うものではない、と寛容な笑みを浮かべて見せながら。

「必要か必要でないか、という問題ではありませんよルヴィアゼリッタ。シロウの料理は素晴らしい。理由はそれだけいいのではないでしょうか? 食べることを粗末にしては(いろどり)のある生活は送れません──暮らしを豊かに彩ると言うことは今を生きる上でとても大切なことなのだと、そう思いますが?」

「え──ええ。確かにそうですわね……」

 静かに、だが妙な迫力を伴って力説するセイバーのその言葉に気圧されたように、彼女は曖昧に笑う。と、キッチンから士郎が顔を出してきて、

「おーいセイバー。味付けはどうする?」

「シロウにお任せします!」

 びし、と親指を立て、眩しいばかりの笑顔で言い切るセイバー。

「そっか、わかった。んじゃ同じ和風にするからな」

「はいっ」

 頷き、うずうずとしつつも座り、料理の出来上がりを待つセイバー。

 その様子をちらちらと見ながら、ルヴィアはやおら意を決したように口を開く。

「……あの」

「なんです?」

 きらりと真顔で、しかし涎を垂らしたままセイバーは振り返る。

「セイバーさん──でしたかしら」

「ええ」

 頷きつつも、その視線はちらちらと鉄板を見ている。

 ルヴィアはくすりと小さく微笑みつつも、

「英霊、なんですよね……そう、あちらのライダーさんも。興味深いですわ……ええ、実在の英霊を目の当たりにして興味を持たない魔術士(もの)などいないでしょう?」

「いや……その」

 居心地が悪そうに身じろぎするセイバーを余所に、彼女は盛大に嘆息してみせた。心底呆れたと言うように首を振り、肩をすくめる。

「本当にこの屋敷は驚くことばかりです。一体なにをどうやったらこのような面子が揃うんだか……」

「それについてはまあ、否定しきれませんね」

 未だに何やらぼそぼそと打ち合わせのようなものを行っている凛たちの様子を見ながら、苦笑。

 ルヴィアはどこかぼんやりと、遠くを見るような眼差しでぼやく──。

「……ええ、本当。こんなに色々な……ずるいですわ、ミストオサカ……」

「……ルヴィアゼリッタ?」

 聞き返すと、彼女は慌てて居住まいを正して咳ばらい。ただし、その頬は僅かに赤く染まっている。

「な、なんでもありませんっ」

「そうですか。私はてっきり──いえ、やめておきましょう」

 意味深な笑みを浮かべるセイバーにルヴィアは半眼で詰め寄った。

「なんです、気になるでしょう」

「いえいえ。大したことでは」

 手で制するような仕草をする金髪の少女に彼女はさらに詰め寄ろうとして、

「そんなこと言わずに教えてくださ──あっ?」

 その過程でバランスを崩した。咄嗟に手をついて顔を守ろうとする──

 そして同時、セイバーもまた彼女を支えようと動きはじめており──

 

 がしっ。

 

 結果として、彼女は倒れずに済んだ。支えているのはセイバーの差しのべられた手──そして、自分の右手。

 セイバーの頭を支えとしている、彼女の右手のおかげで。

 顔をしかめつつも体勢を整え、申し訳ないと言うように笑みを浮かべつつ、

「いたた……ああもう、何ですの? ……ごめんなさいね、セイバーさ……」

  声が──虚空へと吸い込まれる。

 ルヴィアゼリッタは……絶句していた。

 ──手。

 ──彼女の右手が、セイバーの頭を掴んでいる。それはいい。そこまではいいのだが──。

 

 がっしゃん。

 

 響くのは、鉄を軋ませるような重厚音。

 ──何故(・・)彼女の姿が変わっているのだろうか(・・・・・・・・・・・・・・・・)──?

「……せ、セイバーさん?」

 どうしたらいいのかわからずに呆然とするルヴィアゼリッタ。

 そして──

『…………………………………っ!?』

 皆が一斉に顔を引きつらせ、硬直する──

 居間に、突如として壮絶な緊張感が張り詰めた──。






 

「ばっか──」

 声は、部屋の隅から響いていた。振り返れば、そこには顔を青ざめさせた凛の姿。

彼女は瞬時に異変に気づき、そして結果として何が起こったのかを理解したようだった。『だっ!』と瞬時にルヴィアゼリッタの元へと近寄り、その手を払い除けさせ、『ばっ!』と辞儀をする──

「──何か御用命はございますか、王!」

「え、え?」

 状況についていけないのか、ルヴィアはおろおろと二人を見比べるだけだった。

 黒の王は、静かに告げた。

「いや。特にない。さがれ」

「か、かしこまりましたっ」

 無理矢理ルヴィアの頭を押さえつけ下げさせてから、素早く下がろうとする──

「──いや、待て。リン」

 ──が。気が変わったのか、王は呼び止めた。

 これ幸いと安堵していた凛の表情が、一瞬にして再び緊張に包まれた。

「は、はいっ! 何か御用でしょうか!」

 屹立する凛を静かに見据えながら、王は告げる。

「着替えを用意なさい。この前のものでいい。──それと、シロウ」

「は、はいっ!」

 キッチンから居間の様子をこっそりと窺っていた士郎は慌てて王の元へと飛び出すと、背筋を伸ばした。

「それはもう完成しているのか?」

 王が指さしたのは、じゅうじゅうと音を立てている餅ステーキである。

「い、いえ。ですがもう少しで完成です!」

「よろしい。では出来次第持ってきなさい」

 言い捨て、着替えるためなのか、凛と共に部屋から出ていく王──。

「は、はいーっ」

 頭を下げ、素早くキッチンへと引っ込む士郎。

ぱたん。

襖が完全に閉まったことを確認してから、こっそり桜が忍び寄ってきた。わたわたとしつつも小声で囁く。

「せせせせ先輩、どうするんですかっ!?」

 士郎は顔を引きつらせながらキッチンを見渡した。今焼いているものはもうすぐ出来上がるが──

「くそ、まずいな。これだといろいろこだわり食材とかが──ええいくそ、雑に! 今から雑にしあげるしかない……! ……いや、違う。あの王の嗜好からして──そうか、こう言うことか……!」

 ぶつぶつと独り言をつぶやいていたが、やおら何かをひらめいたのか、動き始める──

「せ、先輩、それはいいんですけど食材がもうないですっ……!」

 冷蔵庫の中を確認していたが悲鳴をあげる。

「それならば私が行きましょう。恐らくこの中で一番機動力があります。さあ、早く買う食材をリストアップしてください」

 すっと手を挙げたのはライダー。いつも通りの冷静な表情──ではあるが、よくよく見ればうっすらと冷や汗をかいているようである。士郎はそれを聞いてこくりと頷くと、紙とペンを取りに行くべく身を翻した。

「よしわかった。──桜、鉄板頼むぞ!」

「は、はいっ!」

 と、今度はバゼットが顔をのぞかせた。襖の奥を何度も見返しながら、

「士郎君、よくはわかりませんが──そう言う事(・・・・・)なんですね?」

「ああ。とにかく洒落とか通じないと思うからな。多分だけど。特にカレンあんた気をつけろ。あとルヴィアも」

「は、はいっ……」

 二人は顔を引きつらせて頷いた。

「よし、じゃあライダー頼むぞ。皆、とにかく──ええと、頑張ろう。うん、頑張るぞ……!」

 自分に言い聞かせるようなその言葉に、皆もまた悲壮な決意を顔に浮かべつつ頷く──

 かくて──

 戦いは、はじまったのだった。

 

 

 

 

 

 

「こ……こちらでよろしかったでしょうか」

コトッ──

 漆黒のドレスに身を包んだ王の前に置かれたのは、餅ステーキだった。

 ただし、先ほどルヴィアが食べていたものとは少々形状が異なる──餅を薄く丸く引き延ばして焼き、それを重ね、その間にステーキとレタスを挟み込んである。ソースは醤油をベースにして大根おろしを加えたものだ。

 言うなれば、和風ハンバーガーだった。

「うむ」

 王は頷いた。

 がしっと無造作に手に取り、口へと放り込む。

「もっきゅもっきゅ。」

 王は大きく咀嚼し、そして飲み込む。と、『ばんっ!』と襖が開き、両手に大きな買い物袋を提げたライダーが姿を現した。

「し、シロウ、買ってきました!」

「よし、さすがライダー早い……!」

 ぐっと拳を握る士郎の耳に、今度は桜の声が届く。

「もっきゅもっきゅ。」

 王はマイペースに餅バーグを食べている。

「せんぱーい、お餅焼き上がりましたー!」

「士郎、お肉もうすぐいけるわ。ルヴィア、ソースの準備はいい……?」

「ええ。レタス共に出来ています。早くよこしなさいリン!」

「ようし、皆もう少しがんばってくれ……!」

 頬には一筋の汗。士郎は呟きながらも配膳を行っていく──。

 

 

 

 

 

 

 そして──。

「……満足した。」

 その呟きと共に、王は静かに眼を閉じた。

 ──時間にして80分。消費された餅と肉の量は──推して知るべし。

 すっ……

「……あれ」

 目を開いた彼女は、ぽかんと呟いた。

「し、シロウ? 一体どうしたんです……?」

 王──いや、セイバーはわたわたとして尋ねる。

「…………戻っ、た……?」

 士郎は呆然とそう呟き──そしてすとんと座り込んだ。

「え……終わったの……?」

 餅を焼く手を止め、凛が振り返る。

「はあぁ……」

 がくりと項垂れ、安堵の息を吐く桜。同様に、他の面子も一斉に崩れ落ちる──

「い、一体何だったんですの……」

 のろのろと呻くルヴィア。と──その前に、『すっ……』と立ちふさがる人影があった。見上げればそこには、満面の笑みを浮かべた凛の姿。そして、彼女は。

 

 すぱーんっ!

 

 問答無用でルヴィアの頭を、どこからともなく取り出したハリセンではたいた。

「っこの馬鹿ルヴィア! アンタなんてことしてくれたのよー!」

「い、痛いじゃありませんか! 何をするんですっ!?」

「何じゃない!」

 喚くルヴィアをしり目に、なおも怒りが収まらないのか噛みつく凛。それにバゼットも続いた。

「全くだ。いいですかルヴィア、世の中には洒落ですむこととすまないことがですね──」

「呆れた。全く、まるで凛じゃない。こんなドジッ娘一人で十分──」

『やかましい!』

 声すらハモらせて二人が叫ぶ。

 桜もまたふるると首を振り、両手を組んで呟いた。

「そうです、いくらなんでもあれはひどすぎます! 一体今のでどれくらいの生活費がふっとんだと思ってるんですか! 姉さん並の致命的ドジですっ!」

「ってちょっと待ちなさいよ桜、どういう意味よそれ。」

「え? いえ、そのままの意味ですけど。」

 あっさりきっぱり言い放つ桜。そこにバゼットが割って入って、

「まあまあ二人とも落ちつい──」

『ダメットはだまってて。』

 きっぱりと告げる。

 バゼットは体を震わせると、

「…………。ふ──いい度胸だ、二人揃ってそこに直りな──」

 言いつつバゼットは『ばっ!』と勢いよく手を振り、二人へと歩み寄り──

 ──その手が。立ち上がろうとしていたセイバーの頭に触れた。

「え」

 瞬間、固まるバゼット。

「へ」

 何がおこったのかわからず──いや、わかってはいるのだが、その状況を認めることを脳が思考することを拒否している──、絶句する凛たち。

そして。

 

 かっ──!

 

 漆黒の光が、セイバーを中心に溢れ返る──!

「ばかー! バゼットのばかー!」

 半泣きで叫ぶ凛。

「ああああっ、エンドレスううううっ!?」

 頭を抱える士郎。

「ま、また買出しですかっ!?」

 がびーんと顔を引きつらせるライダーに、桜もまたがっくりと項垂れ、唸る。

「お金が……生活費が、どんどんなくなる……」

(ワタクシ)……なんだかもうロンドンに帰ったほうがいいような気がしてきましたわ……」

 あああああと呻くルヴィア……

「……では。」

「待て。」

 こっそりと逃げ出そうとしていたカレンの襟首を掴む士郎。これはこれでありですね○○、と呻いているようだが誰も取り合わない。そんな余裕は誰にもない。

 そして──光が止み、その中から王が姿をあらわす──

『……何か御用命は。王よ。』

 一斉に皆が頭を垂れ、問う──

 ──結局。

 衛宮邸に再び平穏が戻ったのは、約2時間後のことだった……。














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