後後後後後後後後後後後後後後後後日談。







「ふあ……」

 大きく口を開けて息を吸い込み──そして欠伸。

「平和だねえ……」

 空を見上げれば、青く澄み渡った晴天。風はやや強い──そのため、少し肌寒い。まあ自分にとっては大した意味を持たないが。

 冬木の町の一角。特にあてもなくぶらぶらしていたらここに辿り着いていた。今日は特に用事がない──最も、用事らしい用事などここ最近あった試しがなかった。

(けど、まあ)

 のろのろと気ままに歩き、にやりと口を歪める。

「こんなのも、悪くはねえ──か」

 やれやれ、と肩を竦め、交差点を右に曲がってみる。

 朝と昼の挟間。昼食にはまだ早いか──どうでもいいと言えばどうでもいいことをぼんやりと考えつつ、今度は左へ。と──

 ──奇妙な人影を、目に捉えた。

 ここ最近──と言うよりも、この時代の日本では初めて見る。青の豪奢なドレスに身を包んだ、金髪の女性。

 旅行者なのだろうか。それにしては手荷物がハンドバック一つと言うのがわからないが。スタイルはかなりいい。冗談のように整った顔立ちには、些か苛立ちの様子が見て取れる。ついでに言えば、魔術師のようだ。

「へえ……」

 物珍しさが手伝わなかったと言えば、嘘になる。彼は女性の方へと歩いて行くと、

「よう」

 いつものように、適当に声をかけた。

「──なんですの、貴方」

 じろり、と。

 警戒心もあらわに睨まれる。

 勘弁してくれよ、と手で制しつつ、彼は続けた。

「いや、珍しかったから声をかけた。お譲ちゃん、これから用事とかあるのかな?」

 出来るだけ軽い口調で尋ねてみる──帰ってきたのは、呆れたような嘆息だった。

「……随分と失礼な方ですのね。(レディ)に向かってお譲ちゃんなどと──」

「悪い悪い、勘に触ったんなら謝る。──で、こんなトコでどうしたんだ? 言っておくがここら辺には遊ぶとこはないぜ──住宅地だしな。そうだな、遊ぶんならこっち側じゃなくて新都の方にだな──」

「こちらでいいのです。人を訪ねるところで──ああ、そうですわ。貴方、この住所、どこだかわかりませんこと?」

 言って、紙切れを見せてくる。そこには流暢な筆記体で文字が書かれており──

「ああこれなら案外近い……ってなんだ、これ坊主の家じゃねえのか?」

「……ボウズ?」

 眉を潜めるルヴィアにぱたぱたと手を振って見せながら、へえ、と感嘆の声をあげる。

「ああいや、こっちの話。なんだ、お前さん衛宮士郎に会いに行くのか。坊主もやるねえ……」

「……? いえ、(ワタクシ)はリン──いえ、ミストオサカに用事が……」

 戸惑った声。そっちかよ、と苦笑しながら紙を返してやる。

「ああ、そう言うことか。大丈夫、これで合ってるぜ」

「そ、そうなのですか」

 はあ、と曖昧に頷くルヴィア。

 ぐるりと手を頭の後ろで組み、たらたらと進みながら彼は告げる。

「まあいいさ。ちょうど俺も退屈してたんでね。だから一緒に行くわ。いいだろ?」

「え──ええ。それは──構いませんが」

「うっし、そうと決まったら早速出発だな。──ああ、バック貸しな」

 ほれほれ、と手を出すが、ルヴィアはジト目でこちらに視線を送ってくる。ん? と振りむくと、彼女はぎゅっとハンドバックを抱きとめながら、

「結構ですわ。そこまで信用したわけではありませんので」

「……きついこと言うね、譲ちゃん」

 苦笑。

「……ですから。その呼び方はやめて頂きたいのですが」

「ああ、了解。俺は……そうだな、まあランサーとでも呼んでくれ」

「はあ。また随分と変わった名前ですのね──?」

 すぅっ──

 一瞬、鋭い視線がこちらを貫くが、大して気にせずランダーは肩をすくめた。

「名前じゃねえさ。まああだ名みたいなもんだ」

「そうですか」

「で、俺は何て呼べばいい?」

「──では、ルヴィアと」

 多少頬をゆるめて、彼女──ルヴィアは呟き、隣に並んだ。

「ん、了解。──ああ、ところでフルネームは何て言うの?」

 尋ねると、彼女は挑戦的にこちらを見上げながら、

「ええ。(ワタクシ)、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと申します。宜しくお願いしますね、サーヴァント・ランサーさん?」







「やれやれ……なんだ、最初っからお見通しってわけか」

 さっきから苦笑ばっかりだな──そんなことを思いつつ、人のいない道を歩いていく。魔術士だろうとは思っていたが、まさか初見で看破されるとは予想外だった。

「そう言うわけではありませんが。でも、名前から連想するのはそう難しいことではないですわ。ランサー。聖杯戦争の役割(クラス)の一つ──そして、この町では先日聖杯戦争が行われた。ええ、ええ。それについてはミストオサカからさんざん聞かされていますもの」

 忌々しげに眉を──それでもあくまで上品になのが、感服せざるを得ないが──、潜め、ルヴィア。

「……ひょっとしてそんなに仲よくねえんじゃねえのか、アンタら」

「当然でしょう。天敵ですわ、あの女狐は」

 ふん、と吐き捨てる。

 なら何でこんなトコまで来てるんだ、とは思ったが、口には出さないほうがよさそうなので、黙っておく。

「ま、そんなもんかね──」

代わりに適当に相槌を打ってから、くるりと視線を向ける。

「で、お前さん、なんでこんなトコ歩いてたんだ」

「? ですから、リンの屋敷に向かおうと──」

「徒歩でか? そんな変てこな服装で?」

「へんて……っ!?」

 彼女は絶句した。ぴたりと足を止め、硬直している。やべ、と思ったときにはもう遅かった。やがて──ふるふると肩を震わせながら、彼女はゆっくりと顔をもたげた。にっこりと、完璧に怒り狂った笑顔をこちらへと向け、告げてくる。

「……いいでしょう。売られた喧嘩は買うのがエーデルフェルト家の勤め」

びしっと指を突き付けてくる。

「いざ、勝負──!」

「いや、勝負っていわれてもな……」

おいおい、と肩を落とし、呻く。ふふんと得意げにルヴィアは胸を張った。

「大丈夫ですわ。今人払いの結界を張りますので」

「いや、そう言うことじゃなくてよ」

 肩を竦め、視線を外し、先に進む。

「お前さんとやり合う理由が俺にはないわけだ」

「あら。(ワタクシ)にはありますわ」

 挑戦的に睨み上げてくる視線には目を合わせないようにしながら、とりあえず相槌を打つ。

「……へえ?」

 彼女のそれは、いつの間にか敵意から好奇心へと変わっているようだった。目をきらきらと輝かせ、ルヴィアは。

「私、実在する──と言うのも変ですが──英霊に会うのはこれが初めてですの。是非ともその力を見てみたいのですが」

「……勘弁してくれ。お前さんが根っからの魔術士だってことはわかったがよ──それにしたって、アレだ。なんでナンパ目的で近づいて戦闘なんざしなきゃいけねぇんだか。それに──ほれ、そんな格好だと動けるもんも動けねえだろ。折角のドレス汚すんじゃねえよ」

 ぱぱっと言い捨て、この話は終いだと暗に言ってやる。

「ご心配には及びません。このような服、こうして──」

 言いつつ、何やらごそごそとドレスをいじっている。

「──ほら、このように」

 見ると、両腕部分が取り外されていた。

(何だ、そりゃあ……)

 思わず、呻いている。

 がしがしと頭をかきながら、かくんと肩を落としつつ──、それでも言ってやる。

「いや、そう言うことじゃなくてよ──つーか、そもそもあれだ。なんで歩きなんだよ。金持ちみたいだし、それならタクシー乗ればいいだろ。わざわざ新都から歩いてこなくてもよ」

 瞬間──

「…………………。」

 ルヴィアが硬直した。ぎょっとして思わず見返すが、彼女はそれどころではないようだった──眼を見開き、まるで石像のようにぴしりと固まっている。しまった、と舌打ちしつつ、額に手を当て告げる──。

「……あー、悪い。聞かなかったことにしてくれ。な?」

「……屈辱ですわ……っ」

 わなわなと体を震わせ、ルヴィアは『きっ!』とこちらを睨み上げてくる。

「この時代ですらない者に、そんなことを言われるなどと──」

 どうやら本気でその選択肢が思い浮かばなかったらしい──唇を噛みしめつつ喚くルヴィアを、どうどうと手で制しつつ、

「だから気にすんなってのに。──しかしなんだ、アンタ相当世間知らずみたいだけど、一人旅なの?」

「……ええ。召使いをわざわざ連れてくるのも気が引けましたので」

 そこまでするほどのことでもありませんしね──と言ってくる。また予想外の答えが返ってきた。

「ああ、へー、いるんだ。召使い。友達とかそう言うこと聞いてたんだけどなぁ……」

「ふん──トモダチなど、魔術士には必要ありませんわ」

 さらりと呟く。

 ──少しばかり瞳が翳ったように思えたが、気づかないふりをして肩をすくめた。

「……まあ、いいけどな」

 と、ふいに思い出し、にやりと口を歪めながらからかってやる。

「でもあれだな。世間知らずってトコは否定しないんだな──?」

「なっ──違います、失礼な方ですわね、本当……!」

 瞬間、顔を真赤にして言い返してくる。ふん、ととうとうそっぽを向き始めたお姫様に両手を合わせてやりながら、

「悪い。だから機嫌直してくれって──な? お、ってちょうどいいとこに自販機あるじゃねえか……ちょっと待ってろよ?」

 反論を許さず言い捨て、自動販売機へと近づいていく。適当にホットの飲み物を二つ買い、ルヴィアの元へと戻った。

「ほれ。どっちがいい?」

「? 何ですの、これ」

 何か奇妙なものでも見る目で、彼女は見つめてくる。

「ん? こっちがコーヒー、こっちが紅茶だな」

「そう言うことではなくて──え、これは飲み物……なんですか?」

 戸惑ったような視線に、口元が引き攣った。

 勘弁してくれよ、と苦笑しつつ、ひとまず聞き返してやる。

「……おいおい……マジで言ってんのか?」

「え、えっ?」

 頬を染めてわたわたとする仕草は正直可愛いらしかったが、苦笑の方が先にでた。

「なんだ──アンタ本当にお嬢様なんだな。いいか、見てろよ」

 言いつつ、缶に指をかけ、蓋を開ける。

「──ほら、この中に飲み物が入ってる」

 はあ、と生返事を返してくるルヴィアに向けて缶を差し出し、

「どっちがいいですか? お嬢様」

「……では、こちらで」

 紅茶を手に取り、恐る恐る口をつける。くぴ、と僅かに缶を傾け──そして彼女はうっと呻いて咳きこんだ。

「……っ。なん──ですの、これは……?」

「? 何って紅茶。ああ、ミルク入りじゃないと駄目だったか?」

 悪い、と言ってやるが、ルヴィアは納得しないようだった。ふるふると首を振りつつ、ショックを受けたようにまじまじと缶を見下ろしている──

「そう言うことではありません……なんて味、こんな紅茶、私の屋敷のメイドの方がよっぽどおいしく淹れますわ……」

「いや、自販機にそこまで求めてやるなよ。安いんだから勘弁してやれ。な?」

 まいった、こいつは相当だな──苦笑しようとして、そう言えばさっきから苦笑(これ)ばかりしている自分に気づく。

「……もう結構です。御馳走様でした」

 口元を上品におさえつつ、缶をつき返してくる。

「へいへい。しっかしあれだな──アンタ、面白いなあ」

 にやにやとしながら言ってやると、ルヴィアはむっとしたように眉をしかめた。ふん、とそっぽを向きつつ言い捨てる。

「ええ、まあ貴方よりはましだと思いますけれど」

「んなことねえって──って、ああ、なんだ。そう言うことか」

 と、先ほどから脳裏に浮かんでいたようやく符号が一致し、納得する。

「……なんです、気味の悪い」

 眉を顰めながら聞いてくるルヴィアに、何、と手を振りながら、

「いや、何。お前さん、あれだな。トオサカの譲ちゃんに似てるんだなあ」

「─────っ!」

 瞬間──ルヴィアの表情が、一変した。






 

「おい、待て」

 やべー、と内心焦りながら、追いかける。

「待てってのに」

 前方をつかつかと歩いていくルヴィアは、足を止めないまま律儀に聞き返してきた。

「なんですのっ!?」

「いや、何いきなり怒ってんだ、アンタ」

 きっ──

 交差点の直前でルヴィアゼリッタは唐突に立ち止まり、勢いよく振り返ると、

「アンタ、などと呼ばないでくれませんこと!? 仮にも(ワタクシ)、エーデルフェルト家の──」

 言いつつ、指を突きつけ、こちらへと詰め寄りかけ──

 振り返った拍子に、ハンドバックが大きく周り、それが──

 交差点を走っている車の一台のサイドミラーへと、ひっかかった。

「え」

 ぽかん、と呆けるルヴィアゼリッタ。

「げ」

 顔を引きつらせるランサー。

「って、きゃ────」

 悲鳴が上がり始めたそのときには、もう動いていた。一気に踏み出し・ルヴィアゼリッタの体を支え・同時にハンドバックの紐を片方千切る──もう引っかかっていないのを確認してから素早く体を引っ込め、舌打ちと共に口を尖らせる。

「ったくよぉ……こっちは脇道だがあっちは本通りなんだ。わんさか車通ってるだろうに。ちょっとは前を見てだな──」

「す、すいませんでした……」

 見下ろすと、ルヴァゼリッタは顔を青ざめさせていた──しまった、またやっちまった。

「や、悪い、言いすぎた。大丈夫だったか? 怪我ないか?」

「え──ええ」

 こくり、と頷く。

 と、手に握っていたハンドバックの存在を思い出した。ぽりぽりと頭をかきつつ、無残な姿になったバックを突き出す。

「あー、あと悪い、千切っちまったわ」

「問題ありませんわ──(ワタクシ)を誰だと思っているんですの?」

 ふん、と鼻を鳴らして呪文を唱える──あっという間にハンドバックは修復された。へえ、と感心する──どうやら口だけではなく、正真正銘、一流の魔術士のようだった。

「ふう」

「……ま、あれだ。張り切るのもいいがな、もちっと身の回りに気をつかったほうがいいぜ。ったく、嬢ちゃんと言いアンタといい、どこかしら抜けてるっつーかなあ」

「……ですから。ミストオサカと同じ扱いは──」

 不満げに口を尖らせてくる。

「ああ、そうだったな。悪い悪い」

 苦笑し、歩き出す。

「……お待ちなさい」

 くい、とシャツの裾を掴まれた。

「ん?」

「貴方、血が出ていますわ」

 彼女の視線を追いかければ、確かに右肘から僅かに血が滲んでいた。先ほどの一件で擦ったのだろう──怪我のうちにも入らないようなものだ。

「ああ、まあこんなもん放っておけばそのうち治る──」

「……そう言う訳にもいきませんわ」

 ぶすっと顔をしかめ、彼女は大げさに首を振って見せた。

(ワタクシ)のせいで怪我を負って、しかも何もしないとなれば、(ワタクシ)の名誉に傷がつきますので」

「そうかい。そりゃあ──悪かったな」

 苦笑して、大人しく治療を受けることにする。彼女は呪文を唱えようと身を屈め──そして、唐突にぴたりと動きを止めた。

「……ん? どした?」

「少々お待ち下さいね?」

 にこりと微笑し、彼女は鞄を漁り始めた。やがて中から一枚のハンカチを取り出し、傷口へと巻きつけた。

「……ひとまずはこれで大丈夫でしょう。あとは雑菌が入らないように帰ったら消毒してくださいね?」

 おいおい、と白いレースのハンカチを見下ろしながら、呻く。

「おい、これなんか高いやつじゃねえのか?」

「そんなことありませんわ」

 嘯くルヴィアに、はあ──と嘆息しつつ、口を開く。

「あのなあ、アンタ」

「ですから、アンタはやめて欲しいと言ったでしょう」

「……ええとな、これはやめてくれ。俺は英霊だぜ? こんなもん本当にすぐに治るんだからよ──」

 首を振り、ナンセンスだ、と告げてやる。が。

「……貴方も相当頑固ですこと。──では、助けてくれたお礼と、案内してくださったお礼と言うことでお願いしますわ」

 彼女もまた一歩も引くつもりはないようだった。まっすぐにこちらを見つめて、はっきりと言い切ってくる。

「──…………。」

 思わず、沈黙していた。

「ああ、わかった。ありがたく貰っとく」

 言って、そっとハンカチに触れ、再び歩き始める──

「ったく、本当、嬢ちゃんそっくりじゃねえか」

 ぼそりと、聞こえないように小さく呟いて。

「何か言いまして?」

 聞き返してくるルヴィアには首を横へと振っておく。

「いんや? ──お、あれだあれ」

 ──道の向こうに、ようやく衛宮邸が見えてきた。

 ルヴィアはふうん、と鼻を鳴らすと、

「……随分古風な家ですのね」

「そうだな」

「何やら賑やかそうですが」

「まあ、いつものことだ」

「はあ……」

 ぼんやりと、まるで未知の世界でも見るように眺めている。いや、実際そうなのだろうが。

 ふと先ほどのやりとりを思い出し、釘をさしておく。

「まあ、あれだ。仲良くやれよ?」

「それは──難しいかもしれませんわね?」

 にっこりと笑い、そう告げてきた。

 ……どうやら何かやらかすつもりだしい。このお譲ちゃんは。

 まあいいけどな──とぼんやり考えつつ、足を止め、ひらひらと手を振ってやる。

「ま、ここまで来れば後はひとりで行けるだろ、じゃあな」

「え? 一緒に寄ってはいきませんの? お知り合いなのでは──」

 よほど意外だったのか、ぎょっとして見返してくる──が、こちらとしては顔を顰めるしかない。

「勘弁してくれよ。おっかねえマスターと元マスターまでいるんだ。顔なんざ合わせてたらまた偉いことになるに決まってる」

「は、はあ……」

 曖昧に頷いてくるルヴィアに背を向け、ひらひらと手を振りながら、

「まあ、あれだ。皆によろしく言っといてくれや」

「──わかりましたわ」

 やれやれ──という声を背中越しに聞きながら、告げる。

「んじゃな、ルヴィア」

「──全く。ようやく名前を呼んでくれましたのね……ええ──御機嫌よう、ランサー」

 苦笑しているらしい。くすくすという笑い声が聞こえてくる。

(ま──)

 さて、と気合をいれているようなルヴィアの声を背中越しに聞きつつ、歩き出す。

(こんなのも、悪くはねえよな──?)

 そっと、白いハンカチに触れてから。

 ランサーは少しばかり太陽の高くなった町並みを歩き始めた──。

 






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