奴隷王
「いや、最近ふと思うのだがな?」
と。
ごく自然に衛宮家の居間に座りつつ、むうと唸っているのはギルガメッシュだった。
「えーと」
テレビを見ていた凛が振り返り、人差し指を額にあてる。
「ごめん、誰だっけ」
「おいっ!?」
たまらず叫ぶギルガメッシュに、やだなあ姉さんったら、と笑いつつ桜がぴっと指を立てた。
「あーほらあれですよ。ギル……ギル……」
「おおう、もう少しだ腹黒女!」
『ぐぐっ!』と拳を握り、身を乗り出すギルガメッシュ。
対して桜は途端に視線を底冷えさせて、平坦な口調で、
「……ギルバートでいいんじゃないんですかこんなの」
「確かに竪琴は宝物庫の中にあることはあるが、違う!」
その横ではカレンがぼそりと呟いていた。
「ネタ振りが微妙。2点」
「なにさまだ貴様っ!?」
ぐおーと叫ぶギルガメッシュに嘆息しつつ、凛は呻いた。
「と言うか、何しにきたのよアンタ」
「うむ。暇だったからな」
王は腕組みをしつつ言い切った。
「働け」
さらに視線の温度を下げる凛に、ギルガメッシュは朗らかに笑いつつ、
「王たる我が働くなどありえんな。いやむしろ働かないことこそが我にとっての仕事であり、」
「汗を垂らして働くひとは素敵だと思います」
と、両手を組んで静かに頷いたのはセイバーだった。そしてギルガメッシュはすかさず王の財宝を出現させると、
「鉄骨出ろー! ネクタイーでろー! オレは働くサラリー、メーン!」
ネクタイを頭に巻いて鉄パイプを担いで喚いているギルガメッシュをぼんやりと眺めつつ、凛は頬杖をついたまま、
「んー何、そんなに働きたいの?」
「うむ! 我は働き者だからして働きたいのは当然だな!」
腕組みをしつつ叫ぶギルガメッシュに、凛はぴっと一枚の紙切れを取り出してみせた。
「なら、これにサインしたらもっと働けるわよ?」
「そうか!」
ギルガメッシュは即座に頷くと、それにぱぱっとサインをした。紙を返しつつ、尋ねる。
「ところでこれは何だったのだ?」
「えーと、使い魔契約書?」
にやりと笑いつつ、とりあえずお茶ね、と言い切る凛。
ギルガメッシュはひくりと頬を引きつらせつつ、
「……ほ、ほう。して何がどのようになっているのかな?」
「奴隷キングねあんた」
凛は言い切った。
「………むう」
ギルガメッシュは腕を組んでしばし考えたあと、
「まあ、キングならよし」
『いいんだ。』
完。